月の出の決闘月の出の決闘

時は天保十三年。人斬稼業の男一匹、大利根川原を飛んでゆく。

白装束に黒の帯。浪人たぶさに月代撫でて、天堂小彌太は鬼か、魔か。

Story -ストーリー-

白の着流し、黒の帯チョイと鮫鞘落としざし、一升徳利を片手に下げて、月もホレるか天堂小彌太。やくざ渡世の用心棒をポンと引き受け叩いた胸に、男勝り、おせん茶屋のおせんが惚れた。
小彌太は親分銚子の次郎吉が奪われた賭場を荒川の大八から取り返してやった。地団駄踏んだ大八は八州見廻に取り入り、陣代長尾から十手捕繩をもらって二足の草鞋の身分となる。長尾は彼を利用して領内に私塾を開き百姓たちの教化に努める大原幽学の勢力を抑えようと計ったのである。得意になった大八は御用風を吹かせ、次郎吉の縄張りを荒らし、両者は激しく対立。百姓たちに組合加入を勧め賭博絶滅を期する幽学は次郎吉にとっても目の上の瘤だ。
小彌太は幽学を斬りに出かけたがいつも彼の偉大な人格にうたれ、次第に自分の浅ましい稼業が省みられた。人斬り稼業の足を洗っておせんと一緒に所帯を持とうと心に決めた小彌太だったが、正義にハッキリ目覚めた今、幽学の危機を知ってじっとしていられなくなった。
「勘弁しろよ!おせん」すがる彼女を突き放し、小彌太は宙を飛んだ。