ピアニストLA PIANISTE

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ぼくは あなたがどんなに哀しい秘密を持っていても愛しています

Introduction -イントロダクション-

女性の心の闇を暴き、2001年カンヌ国際映画祭で3冠受賞!!

「ピアニスト」はピアノ教師と年下の生徒の愛の物語。だが、その先に描かれる彼女の歪んだ愛に、誰もが驚くだろう。その愛は極めて特殊だが、もしある種の規律に縛られたら、誰にでも陥る可能性はあるかもしれないと思えてくる。そんな根元的な女性の姿を描いた本作は、2001年カンヌ映画祭最大の話題作となり、グランプリ、主演女優賞、主演男優賞、のトリプル受賞に輝くとともに、ヨーロッパで大ヒットを記録した。監督に当たるのは、強い作家性によってヨーロッパで巨匠の名をほしいままにしている、オーストリア在住のミヒャエル・ハネケ。彼が描くのは、ピアノ以外は何も許さない母親に束縛されてきた中年女性の初めての恋と、彼女を愛しながらも、本当の彼女を知って悩む男性の葛藤である。愛しても愛することが出来ない二人の切なさが観る者を圧倒する。


物語の舞台はウィーン。エリカは幼い頃からピアニストになるために母に厳しい教育を受け、恋人をつくることさえ一度も許されなかった。名門ウィーン国立音楽院のピアノ科教授となったエリカだが、母の夢だったコンサート・ピアニストにはなれずじまい。そのことで彼女は自分を責めていた。母はエリカが中年になった今も彼女と同居し、彼女を監視するように暮らしていた。ある日、エリカは小さなコンサートに行く。そこでピアノを弾いていた、才能豊かな生徒ワルターが、エリカに恋をする。若いワルターは一途に愛を求め、いつしか彼女もワルターの姿を追いかけていた。そしてエリカはワルターに、誰にも語ったことのない秘密を打ち明けることを決意する…。


エリカを演じるのは「キュリー夫妻」など、各国映画祭の主演女優賞を8作品で受賞している名女優イザベル・ユペール。1978年の「Violette Noziere」に続いて二度目のカンヌ映画祭主演女優賞を本作で受賞。厳格なピアノ教師と、その裏に隠された欲望とのコントラストを演じ分けるにあたり、ユペールは今回、初めてのキスシーンまではノーメーク、その後は徐々に明るい口紅の色に変えていくというやり方をとっている。エリカを愛する年下の生徒、ワルターには「王は踊る」のブノワ・マジメル。ジャンヌ・モロー、ナタリー・バイ、ジュリエット・ビノシュといった名女優たちと共演してきたマジメルだが、ユペールとの初共演となる本作では、いっそう磨きのかかった演技力を見せつけ、カンヌ映画祭史上最年少での主演男優賞受賞となった。彼は絶望するエリカを優しく、そして残酷に愛する青年像をつくりあげ、本作に輝きを与えている。病的なまでに厳しくエリカを教育する母親役は、「若者のすべて」「パリのめぐり逢い」で知られ、今や仏演劇界の頂点に君臨するアニー・ジラルド。娘に怒り狂う、激しい母親を体当たりで演じ、観客を驚かせた。エリカの学校の主任教授にはドイツ演劇界を代表する俳優兼演出家ウド・ザーメル。教授の妻には「カフカの「城」」「ファニーゲーム」など、ハネケ監督作品の常連スザンネ・ローターが扮する。


監督・脚本のハネケは、日本公開作品は「ファニーゲーム」に次いで本作が二作目。ヨーロッパの俳優たちが出演を最も熱望する監督のひとりと称されている。1989年「セブンス コンチネント」で映画監督デビュー。97年の「ファニーゲーム」はカンヌ映画祭コンペ部門招待作品。00年のジュリエット・ビノシュ主演作「コード:アンノウン」はカンヌ映画祭エキュメニック賞を受賞。現代社会の奥に潜む“危うさ”を、独特な映像と演出で鋭く描き続け、大きな評価を受けている。本作では、社会の規律に縛られて自分を見失っていく現代女性を暴いてみせる。原作はドイツ文学賞受賞作家エルフリーデ・イェリネクの、自伝とも言われる同名小説。その壮絶な性描写はポルノ論争を巻き起こした。これを読んだハネケは映画化を15年間熱望した末、今回遂に実現した。全篇を彩るのはシューベルト、ショパン、ブラームスの美しい調べ。ユペールとマジメルは、ピアノ演奏もマスターして役に臨み、大きな喝采を浴びている。劇中演奏されるのは、「バルタザールどこへ行く」でも使われたシューベルト作曲“ピアノ・ソナタ 第20番イ長調 第2楽章 アンダンティーノ”。これはマジメルが自ら演奏している。「バリー・リンドン」でお馴染みの“ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調”も印象的に使われている。トイレで初めて二人が口づけを交わすシーンでは、ヘルムート・ミュラー=ブリュール指揮、ケルン室内管弦楽団の演奏するバッハ作曲“ブランデンブルグ協奏曲 第4番 ト長調”が流される。ラストシーンでは、それまでのクラシック音楽とは一変して、長い無音が続く。その息をのむ緊張感と感動は決して忘れることができないだろう。