Story -ストーリー-

山の神様、ヒバの大木に向かって首を垂れている少年。貴族院議員の父親を持ち、津軽では有名な資産家の息子、大庭葉蔵である。作り笑いをこっそり練習し、体育の授業ではわざと失敗を装って、みんなの笑いを買う。人間というものがよくわからない葉蔵にとって、周囲となじむには“道化”が唯一の手段だった。だが、そんな葉蔵の計算は、クラスメイトの竹一に見抜かれてしまう。あせって竹一に取入った葉蔵は、彼から、女にモテるということ、そして偉い絵描きになるという予言をうける。

上京して高等学校に入った葉蔵は、同じ画塾に通う、6つ年上の堀木に出会う。遊び人である彼に連れられて行ったのは、マダムの律子が営むBAR「青い花」。詩人の中原中也も通うこの店で、泥酔した中原から「戦争は糞の色と同じ茶色なんだ」とからまれ、閉口する葉蔵。だが、しだいに葉蔵自身が酒に溺れ、堀木と共に放蕩を繰り返すようになっていく。そして、そんな生活に疲れてもいった。

竹一の予言どおり、葉蔵は女に不自由することがなかった。飲み屋の芸者たち、何かと部屋を訪ねてくる下宿先の娘、礼子、金なしで酒を飲ませてくれるカフェの女給、常子。中でも常子に自分と同じ寂しさを感じた葉蔵は、ある日、鎌倉の海で心中を図る。だが死んだのは常子だけ…。事件後、より一層のわびしさを感じていた葉蔵は、偶然に出会った中原と共に心中以来となる鎌倉へ向かう。海棠の死に花を見つめる2人。

子持ちの女記者、静子と知り合った葉蔵は、アパートに転がり込み、仕事まで世話してもらうが、酒浸りの日々は続いていた。やがて静子のアパートを出て、BAR「青い花」の二階に寝泊りするうちに、向かいにあるタバコ屋の看板娘、良子にひかれる。そして、2人は結婚するのだった。

人を疑うことを知らない彼女との生活は、葉蔵にとってそれまでになくおだやかな日々だった。葉蔵はついに人間らしさ、というものを実感し始めるが、久しぶりに堀木が目の前に現れたある日、再び破滅へと導かれるような光景を目のあたりにしてしまう…。

この先、葉蔵はどこへ向かうのか?
葉蔵を待ち受ける運命とは―?