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今月のピックアップ・バックナンバー

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第53回「成田三樹夫の世界(後篇)」

前回(第50回)とても重要な作品の紹介を忘れてしまいました。
恐らく唯一の映画主演作品『怪談おとし穴』(’68)です。出世コースにばく進するエリートサラリーマンを演じ、社長令嬢との結婚のために恋人を完全犯罪で闇に葬り去ったつもりが、その恋人の霊にじわじわと追い詰められていきます。現代劇における怪談映画としてもエポックメイキングな作品です。

さて、大映退社後は>『影狩り』 (’72)などに助演しますが、何と言っても東映作品で演じた様々なキャラクターが印象に残っていると思います。
『仁義なき戦い 広島死闘篇』(’73)と『仁義なき戦い 代理戦争』 (’73)で演じた“松永弘”役は、面倒を見ていた若者の死、合併により新たな親分となった山守組長の相次ぐ方針転換や仁義もへったくれもない抗争に嫌気が差し、組を去っていく孤高のやくざを好演しました。一礼して山守組を去っていった姿に心ときめいた方も多いことでしょう。
その後の東映実録やくざ映画では、主人公に対峙する敵役を演じましたが、『柳生一族の陰謀』(’78)では宮中一の剣の遣い手・烏丸少将文麿として白塗りの公家を好演、柳生一族を窮地に追い詰めました。宇宙の王族・ロクセイア12世として登場した『宇宙からのメッセージ』(’78)では、白塗りに飽き足らなかったのか、とうとう銀塗り! 日本人の宇宙人観に大きな影響を与えたと言われています(筆者の思い込み)。
『悲しきヒットマン』(’89)では今までの“コワモテ悪役”から一転、組の資金を使い込んでしまい落ちぶれていくやくざを演じ、その悲哀たっぷりな姿は円熟味を増し、凄味すら感じさせました。

角川映画には『野性の証明』(’78)で初出演、地方都市の政財界を掌握して君臨する実力者を“陰で”支え、汚れ仕事を一手に引き受ける組長役を演じました。『蘇える金狼』(’79)では松田優作演じる朝倉の上司・小泉部長に扮し、「強きを助け、弱きをくじく」という組織の中枢に巣食う小心者を熱演。朝倉が自社の大株主になってからの手の平の返しっぷりは見ものです。
角川映画でも趣向を凝らした役を演じ、『戦国自衛隊』(’79)では石山本願寺で織田信長を苦しめたことで有名な本願寺光佐役として丸坊主の姿を披露(かつらだとは思いますが…)、『伊賀忍法帖』(’82)では謎の妖術師・果心居士を演じ、「フォッ、フォッ、フォッ」と怪しい登場の仕方で記憶に残りました。

テレビでも数多くの作品に出演、これも恐らく連続ドラマとしては唯一の主演作品「土曜日の虎」(’66)で様々な企業悪に挑む企業コンサルタント所長・津村演じ、都会的な艶っぽさを表現。「江戸を斬る 梓右近隠密帳」(’73)では「慶安の変」の中心人物の軍学者・由井正雪を総髪姿で凛々しく演じました。最終回での自決シーンは、物語を締めるにふさわしい潔い散り方でした。また、「探偵物語」(’79)で演じた服部刑事では「工藤ちゃ〜ん」とトンカチで肩を叩きながら、松田優作扮する探偵・工藤とのコミカルな掛け合いで、記憶に留めている方も多くいらっしゃると思います。

映画にテレビにと活躍していた成田三樹夫でしたが、1990年4月9日に永眠。享年55は若すぎる死でした。映画としての遺作は徳川家康のブレーン、儒学者・林羅山を演じた『ZIPANG』(’90)です。
遺稿句集「鯨の目」(’91)では、朴訥ながらも力強い句もさることながら、膨大な読書メモによる博識ぶり、ご家族・友人による寄稿で成田三樹夫の温かい人柄が垣間見られます。
私個人の意見としては、氏が演ずる“吉良上野介”を見てみたかった、と強く思っています。

今月ご紹介した『野性の証明』『蘇える金狼』『戦国自衛隊』『伊賀忍法帖』は当社からDVDを発売しています。
また、シネマヴェーラ渋谷で「成田三樹夫特集」上映がございます(詳しくは、こちら)。
是非この機会に昭和の名優を堪能してください。

怪談おとし穴

製作年:1968

深夜、無人のビルに響く女のすすり泣き!
タイプ室から、更衣室から、エレベーターの天井から……
身も凍る戦慄があなたの背中につきまとう!

野性の証明

製作年:1978年

お父さん、こわいよ! 何か来るよ 大勢でお父さんを殺しに来るよ!

蘇える金狼

製作年:1979年

動く標的、撃ち落とせ!

戦国自衛隊

製作年:1979年

歴史は俺たちになにをさせようとしているのか?

伊賀忍法帖

製作年:1982年

戦国曼荼羅の世界に乱舞する、伊賀忍法帖VS魔界の妖術。