角川映画オススメシネマ映子の部屋-EIKO's ROOM-

今月のピックアップ・バックナンバー

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第37回「『潮騒』だけじゃない! 三島由紀夫映画の全貌」

今回は特別に、私、日暮里アキラが映子の部屋にお邪魔して、5月14日から角川シネマ有楽町で開催される「三島由紀夫を【観る】」から、お薦め作品をご紹介していきます!

昨年11月に没後40年をむかえた天才作家・三島由紀夫は、今なお多くの読者を刺激して止まない不朽の人気を誇っています。三島は1949(昭和24)年、私小説の色合いが濃い「仮面の告白」で高名を上げ、一躍ベストセラー作家となりますが、その才能を映画界が放っておくはずもありませんでした。邦画各社は競うように三島文学を映画化し、現在までにその数は約30本になります。

そんな“三島映画”の中での白眉は、「金閣寺」を映画化した『炎上』 (’58)でしょう。原作の小説は、己が憧憬する美を追い求める余りに国宝の寺に火を放ってしまう青年を観念的に書き上げた作品で、映像化が非常に困難と言われた作品でした。実際、脚本作りは相当に難航したのですが、市川崑監督と監督の奥様であり名脚本家であった和田夏十は、三島が「金閣寺」を執筆した際の創作ノートを本人から借り受け、それを基に原作に底流するメッセージを抽出して、『炎上』の脚本化を進めたそうです。三島由紀夫の深い映画への理解があってこそ、本作のような傑作が生まれたのです。また、本作の映画化を強く望み、リスクのある役柄の挑んだ市川雷蔵の堂々たる熱演も忘れてはならないでしょう。
同じく市川雷蔵が映画化を希望したとされる『剣』(’64)も、必見、いや“必剣”です。

続けて、隠れた傑作としてお薦めしたいのが、『お嬢さん』(’61)です。40年前に作られたとは信じられないほど、とびっきりスマートな作風で、「若尾文子演じる会社重役の娘が、やたらとホームパーティにやってくる父親の部下の中からフィアンセを見つけ出す…」というまるで少女マンガのようなお話。恋愛はドキドキしたいという若尾さんは、よせばいいのに、大勢の男性の中からきってのプレイボーイ(川口浩)を選んでしまいます。『炎上』とはまるでタッチの違う原作で、お話だけ聞くと三島由紀夫の小説とは思えないほど可愛らしい女性向けの作品です。三島の幅広い文学性を知ることのできる作品ではないでしょうか。
本作と同様に若い女性向けに書かれた作品としては、『にっぽん製』(’53)、『永すぎた春』(’57)などが挙げられます。この2本も今観ても全く古びない感性に彩られた名作です。

また、忘れてはならないのが、三島由紀夫が主演を果たした『からっ風野郎』(’53)でしょう。三島と東京大学の同級生であった鬼才・増村保造監督の、まさしく鬼のような厳しい演出を受け、堂々たる主演デビューとなりました。若尾文子を相手役に、世間からのはぐれ者を喜怒哀楽たっぷりに演じ、随所に見せるアクションシーンでも、切れ味鋭い動きを見せます。特にラストのエレベーターシーンは必見です(このシーンの撮影で三島は大怪我を負ってしまうほどでした)。
今回の映画祭では、三島が役者として出演した『人斬り』(’69)や、製作・監督・脚本・主演を一人でこなした伝説の映画『憂国』(’66)も上映となります。

三島由紀夫は、数多の小説とともに、多くの戯曲を残したことでも有名です。そんな戯曲を映画化した一本に『黒蜥蜴』(’62)があります。この作品は江戸川乱歩の小説を三島が劇化したもので、美しいもの、特に肉体美を崇める緑川夫人(その正体は怪盗・黒蜥蜴)と、明智小五郎との変装とトリックの一騎打ちを、妖しく描きます。黒蜥蜴を演じるのは、百万ドルの脚を持つと言われた京マチ子。彼女を中心に、本作では随所のミュージカル仕立ての演出が施され、とにかく飽きさせない娯楽大作となっています。
なお、深作欣二が監督し、美輪明宏が主演しているもう一つの『黒蜥蜴』(’68)は、三島由紀夫が思わぬ形で特別出演しています。こちらも是非ともご覧下さい。

三島由紀夫は、作風が全く異なる小説を書き分けた幅広い魅力を持った作家ですが、他にも映画への出演や自作を映画化させる、監督をするなど、とにかく多才。今回の映画祭をきっかけに、三島由紀夫の魅力を間近で【観て】いただければと思います。
以上、日暮里アキラでした。

炎上

製作年:1958年

誰も知らない! 誰も解ってくれない! 何故おれが国宝に火をつけたかを……

製作年:1964年

彼はアンチ現代だ! とぎすまされた世界に命をかけた異様な現代青年!

お嬢さん

製作年:1961年

三島由紀夫の原作に、若尾文子が再び挑戦!
若尾文子が自らデザインした“お嬢さんスタイル”が話題になった作品!!

にっぽん製

製作年:1953年

朝日新聞500万女性読者を陶酔させた三島由紀夫の新恋愛柔道小説の映画化!

永すぎた春

製作年:1957年

世界が賛美する孤高の作家・三島由紀夫原作、初DVD化

からっ風野郎

製作年:1960年

文壇の寵児・三島由紀夫が、裸の胸に皮ジャンを羽織ったクールなヤクザに扮し初映画主演を果たした話題作。

黒蜥蜴('62)

製作年:1962年

知恵と知恵! 変装と変装!
スリルと恋の一騎打!