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今月のピックアップ・バックナンバー

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第28回「映画で辿る昭和事件史」

“完全犯罪”の代名詞ともいうべき“三億円事件”。その真相に迫った『ロストクライム-閃光-』は、7月3日の公開です。
知らない方のために、“三億円事件”の概要をかいつまんで紹介します。昭和43年(1968年)12月10日に、現金約3億円を積んだ現金輸送車を白バイ警官風の人物が呼び止め、「この車にダイナマイトが仕掛けられている」と乗っていた銀行員を降ろし、輸送車の下に潜り込み発炎筒を発火させ、まんまと車ごと現金を奪い去った事件です。昭和50年(1975年)に公訴時効が成立、昭和63年(1988年)には民事時効が成立し、誰も傷つけなかった未解決事件として有名です。ちなみに盗まれた3億円は、保険金で補填されました。現場に残された白バイをはじめ、遺留品は多かったものの、時代は大量生産時代を迎えており、その多さが逆に捜査を困難にさせたとも言われております。単独犯なのか? 複数犯なのか? 犯人像すら掴めなかった戦後最大のミステリーに、多くの作家がその謎を解き明かそうと挑みました。
さて、その謎に挑んだ永瀬隼介の「閃光」を原作にした『ロストクライム-閃光-』は、隅田川に浮かんだ死体が“三億円事件”の重要参考人であったことから老刑事と若手刑事が“三億円事件”の深い闇を暴き始めます。“三億円事件”の主犯格と目された現職警察官の息子とその死、現金輸送車のガードマンを襲った不幸。誰も傷つけなかった筈の事件の裏には多くの人が人生を狂わされていた…。上層部からの捜査中止の圧力を受ける二人だが、独自の捜査で真相に迫るが…。
老刑事・滝口に監督としての評価も高い奥田瑛二、若手刑事・片桐に若手実力派として活躍も目覚しい渡辺大(わたなべ・だい)が扮し、「女囚さそりシリーズ」の伊藤俊也監督がメガフォンを取りました。
戦後最大のミステリー“三億円事件”の驚愕の事実を暴く『ロストクライム-閃光-』にご期待ください!

今月は、『ロストクライム-閃光-』公開にあわせて、昭和に起こった事件にまつわる3作品を武一の独断と偏見で紹介します。

冒頭のエピソードに“三億円事件”を用いたのが、監督・村川透、脚本・永原秀一による『蘇える金狼』(’79)。大藪春彦原作のハードボイルド・アクション。昼と夜とで別の顔を持つ主人公・朝倉に松田優作が演じ、彼のガンアクションが必見の作品です。昼はごく普通のサラリーマンとして会社勤めをしている朝倉だが、夜は組織へ反逆の牙を剥く一匹狼へと変貌する。その朝倉が会社乗っ取りの資金として現金輸送人を襲う時に、白バイ警官に扮しており、“三億円事件”をほうふつとさせます。

昭和47年(1972年)に起こった“あさま山荘事件”は、群馬県の山岳地帯に潜伏していた左翼テロ組織・連合赤軍が、警察の山狩りに遭い、その残党が長野県軽井沢の山荘に人質を取り、立て籠もった事件です。その様子はテレビで生中継され、当時の人々の関心を呼びました。警察が山荘を鉄球で破壊する映像は有名ですが、実際は途中で機械が停止し、鉄球による突入は失敗したそうです。また、この事件で山荘を取り囲んだ機動隊員がカップラーメンを食べる様子もテレビに映し出され、そのことからカップラーメンの知名度が上がったとも言われています。そんな警察と立て籠もり犯との攻防を描いたのが、『突入せよ!「あさま山荘」事件』(’02)。実際の事件で警察の指揮を執った佐々淳行の著書『連合赤軍「あさま山荘」事件』を原作に、脚本と監督を原田眞人が務め、主人公の佐々役を役所広司が演じました。

昭和55年(1980年)には、お隣の韓国で“光州事件”が起こりました。当時の軍事政権による戒厳令下にあった韓国で、民主化を要求した学生を軍が武力で鎮圧しました。韓国国内では情報操作で正確な情報は知らされなかったそうです。犠牲者は189人と公式発表されましたが、実際の犠牲者は2000人とも言われています。名も無き忘れ去られた死者たちへのオマージュとして
『光州5・18』
(’07)が製作され、キム・ジフンがメガフォンを取りました。

今回ご紹介した3作品は、全てDVDが発売されています。昭和の時代に国内外で起こった事件をこれらの作品で辿ってみてはいかがでしょうか?

蘇える金狼

製作年:1979年

動く標的、撃ち落とせ!

突入せよ!「あさま山荘」事件

製作年:2002年

人質を必ず生きて救出すること…。

光州5・18

製作年:2007年

1980年5月18日。韓国・光州で起きた市民への大弾圧を背景に様々な人間愛を描いた感動の衝撃作!