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今月のピックアップ・バックナンバー

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第26回「映画の中の鎧・兜」

新年度を迎えた4月の喧騒も落ち着き始めた頃にやってくる“ゴールデンウィーク”。皆さまはいかがお過ごしになるのでしょうか(いかが過ごされたでしょうか)? ちなみに、“ゴールデンウィーク”は大映と深い繋がりが…。詳しくは、第1回「ゴールデンウィークの名付け親」で触れていますので、ご覧ください。

“ゴールデンウィーク”の最終日は、“こどもの日”。端午の節句と言うことで、こいのぼりや鎧・兜を飾る風習がありますが、最近ではこいのぼりをあまり見かけません。段飾りの鎧・兜の飾りも縮小されているとか…。そこで、今回は鎧・兜が見られる映画を紹介します。

鎧・兜の数で言えば、『天と地と』(’90)は圧巻。クライマックスである上杉謙信と武田信玄が戦った、“川中島の戦い”を再現するために、エキストラ3300人、馬1000頭を動員しました。馬の調達と広い画を必要としたことから、何とカナダ・カルガリーで撮影を行い、当時の新聞に「金髪美女がサムライを熱演」と書かれたようにエキストラは現地の方が務めました。キャッチコピーに「赤と黒のエクスタシー」とあるように、上杉軍の甲冑は黒、武田軍の甲冑は赤に統一され、用意された甲冑は6400体(プラスチック製ですが…)。両軍が激突する映像は、日本映画史上空前の迫力です。ちなみに史実としての“川中島の戦い”は、都合5回あり(「2回説」の異説もあります)、一般的な“川中島の戦い”は第4次のものとされています。このにらみ合いは12年間にも及び、両者が天下を獲れなかった原因の1つとされています。

鎧武者の躍動感では、『乱』(’85)がおススメ。これは、戦国大名の毛利氏が三本の矢の誓いを守らなかったらどうなるか、という黒澤明監督の発想から生まれ、結果としてシェイクスピアの「リヤ王」に近づいたと言われる作品。毛利氏は、元就の嫡男・隆元(夭折してしまい、子の輝元が継ぐ)、次男・吉川元春、三男・小早川隆景の三兄弟が結束を高めて興隆しましたが、この映画では架空の戦国武将・一文字秀虎と3人の息子の結束が崩れてしまい、悲劇的結末を迎えます。長男・太郎孝虎の軍が黄、次男・次郎正虎の軍が赤、三男・三郎直虎の軍が青と色分けし、それぞれの軍が相乱れ、兄弟の相克を描きます。合戦シーンは、黒澤監督独特のマルチ・キャメラで、圧倒的なスケールと迫力を映し出しています。

変り種の甲冑が出てくるのは、『尻啖え孫市』(’69・「しりくらえまごいち」と読みます)。物語は戦国末期、紀伊(今の和歌山県)に大量の鉄砲を用いた傭兵集団“雑賀衆”を率いた雑賀孫市が主人公。雑賀衆の若き頭目である孫市は、始め織田信長に協力しますが、後に袂を分かち、反信長軍の総大将に祭り上げられて数万の信長軍と対峙し、これを打ち破っていきます。映画の中で、孫市は男性の上半身裸を模した鎧を着込んでいます。実際の雑賀孫市は、その正体が明確ではなく、雑賀を治めていた鈴木氏代々の当主それぞれを指す説と、それら複数の当主の経歴が混在した説があります。飛ぶ鳥を落とす勢いの信長に反抗した孫市を英雄視し、数々の逸話が残されたのではないでしょうか?

今回ご紹介した作品は、全て弊社でDVDを販売しています。お子様の端午の節句を祝った方も、はるか昔に祝われた方も、映画の中の鎧・兜を見て童心に戻られてはいかがでしょうか?

天と地と

製作年:1990年

赤と黒のエクスタシー

製作年:1985年

黒澤明、ライフワーク。

尻啖え孫市

製作年:1969年

姫を出せ!ゼニを出せ!天下が欲しくば俺を買え!