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今月のピックアップ・バックナンバー

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第23回「“太宰治”を映画で見る」

2月20日から太宰治不朽の名作『人間失格』が全国ロードショーされます。
原作者は、思春期のカリスマ・太宰治(1909〜1948)。本作は、彼の代表作であり、自伝的小説とも言われています。長年にわたりベストセラーとして読み継がれている本作ですが、意外な事に映画化はこれが初めてになります。“青春のバイブル”と言われように、私、武一も高校時代に太宰作品をむさぼるように読み、なかでも「人間失格」は、「お前(大庭葉蔵)は、俺か?」と衝撃を受けました。大人になって読み返してみたら、青春ど真ん中にいた高校時代とは別の印象を受けました。
映画『人間失格』は、監督が『赤目四十八瀧心中未遂』で数々の映画賞を受賞した荒戸源次郎。主人公の大庭葉蔵には、映画初出演にして初主演を果たす生田斗真が演じ、複雑なキャラクターを見事に表現しています。葉蔵を堕落へと誘う悪友・堀木に伊勢谷友介が演じ、一筋縄ではいかない人間を好演。また、葉蔵を取り巻く女たちには、寺島しのぶ、石原さとみ、小池栄子、坂井真紀、室井滋、大楠道代、三田佳子といった日本を代表する女優陣が熱演しています。日本映画界を代表する錚々たるキャスト・スタッフが揃った『人間失格』をお楽しみに!

太宰原作の映画は、昨年“太宰治生誕100年”ということで「ヴィヨンの妻」をベースにした『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~』と、同名小説が原作の『パンドラの匣』が公開されました。しかし、映画化された作品は、それまで『グッドバイ』 (’49)など6作品しかありませんでした。その中で2つご紹介します。

『看護婦の日記』 (’47)は、「パンドラの匣」が原作。当時の宣伝案には「乙女看護婦の『春の目覚め』を主として謳ひ」(原文ママ)と書かれています。宣伝文には「白衣に包まれた處女(処女)の夢、恥しい頃の心の神秘、夢みる乳房をカメラが覗いた」(原文ママ)となんとも欲情的な文章。当時としては、かなり過激な売り方だったのではないでしょうか。
『奇巌城の冒険』 (’66)は、シルクロードに舞台を移した「走れメロス」の翻案作で、メロスならぬ大角(三船敏郎)が走ります。

『人間失格』には、中原中也(1907〜1937)や井伏鱒二(1898〜1993)ら、実在の文学者たちが登場します。その中の一人、菊池寛(1888〜1948)は大映に縁の深い方。実は、大映の初代社長が彼なのです。
菊池原作の作品では、大映初のカラー作品で、その色使いが絶賛を浴び、カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた『地獄門』 (’53)が有名。アメリカ・アカデミー賞では豪華絢爛な衣裳が評価され、衣裳デザイン賞が贈られました。それもその筈、大映はカラー映画撮影の第一人者・碧川道夫を技術監督に起用し、渡米させて研究に当たらせました。また、洋画家の大家・和田三造が色彩指導として、舞台美術のパイオニア・伊藤熹朔が美術監督として参加し、衣裳を松坂屋が提供しました。当時の一流どころを総結集させた、歴史に名を残す作品です。
『忠直卿行状記』 (’60)は、若くして一国の主となった徳川家康の孫・松平忠直が主人公。槍の立会いで、藩内で忠直にかなう者はなく、忠直は得意絶頂でした。ところが、ふとしたきっかけで、立会いは家臣に勝ちを譲られていたことを知ります。ここから忠直の人間不信が始まり、それまで名君の誉れ高かった忠直は、人が変わったように暴虐非道な行いに走ります。それは真実を求めての所業でしたが、やがて迎える身の破滅への始まりでもありました。悲劇の青年大名を演ずる市川雷蔵の演技が出色。

今回ご紹介した『看護婦の日記』、『地獄門』、『忠直卿行状記』は、残念ながらDVD化されていません。お近くの劇場などで上映される際は、是非ご覧ください。

人間失格

製作年:2009年

日本が誇る、青春文学の最高峰

忠直卿行状記

製作年:1960年

この愛が! この真実が! この苦悩が! 現代人の共感を激しくゆさぶる文芸巨篇!

看護婦の日記

製作年:1947年

白衣に包まれた處女(処女)の夢、恥しい頃の心の神秘、夢みる乳房をカメラが覗いた

地獄門

製作年:1953年

「羅生門」を凌ぐ激情と昂奮!
「源氏物語」に勝る豪壮華麗!
加えて眼を奪う鮮烈の色彩!
総力を挙げて世界に贈る…イーストマン・カラー大映第一回総天然色映画