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今月のピックアップ・バックナンバー

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第21回「スクリーンに映える、眠狂四郎(前編)」

市川雷蔵没後40年特別企画「大雷蔵祭」が12月12日から角川シネマ新宿で、12月19日から梅田ガーデンシネマで上映開始いたします(以降、順次全国上映する予定です)。
雷サマの当たり役は数ありますが、特に有名なのが“眠狂四郎”。後年、名だたる俳優が“眠狂四郎”を演じたものの、雷サマの右に出る方がおられないのが現状。そんな「眠狂四郎」シリーズの作品で、12月上映予定の中から武一お薦めの作品を紹介します。

今更ですが、“眠狂四郎”のおさらいを。戦後時代小説の第一人者・柴田錬三郎によって描き出された狂四郎は、“転びバテレン(キリスト教の信仰を捨てた聖職者のこと)”と、彼に改宗を迫った松平主水正の娘の間に生まれた混血の子。映画で茶髪がかったかつらが使用されているのは、そのためです。父の復讐の結果として生まれた狂四郎は、その出自と若くして母を亡くしたことにより、神を信じぬ非常にニヒルな人物になっています。狂四郎といえば「円月殺法」が有名です。これは剣を下段に構えて円月を描くように回し、相手を催眠状態に陥れ、たまらず斬りかかってきた相手の機先を制しこれを討ち取る技です。『眠狂四郎 多情剣』に登場した赤松勘兵衛は、円月殺法を封じるため、口の中を噛み切り痛みを感じることで催眠状態に陥らない工夫をしています(結局は、狂四郎に返り討ちに遭いますが…)。あくまで、相手が斬りかかってくることを前提とした技であり、自ら斬りかかることを是としない狂四郎を象徴するものです。

映画に話を戻すと、一作目を「狂四郎の持つ虚無性が出ていない」と自省した雷サマは、続く『眠狂四郎 勝負』で早くも眠狂四郎を体現します。正月の江戸、狂四郎はふとしたきっかけで、幕府改革を実行する老勘定奉行・朝比奈伊織(『砂の器』の加藤嘉、好演!)と知り合い、彼の命を付け狙う5人の剣客と相対します。みどころは、シリーズ屈指の名台詞「雪より綺麗な俺の体」(本編より引用)と啖呵をきるシーンが挙げられます。将軍の娘を「豚姫」と罵っておきながら、自らの体を「雪より綺麗」と言い放つナルシスぶりが鼻に付かないのは、雷サマのなせる業か? 大映美術の結晶で再現した、江戸の正月の風景も見もの。初詣でにぎわう神社のロケセット、槍の使い手・榊原と対決する雪の舞い落ちる土手のセットなどその技術に感嘆します。

シリーズ第4作『眠狂四郎 女妖剣』は、円月殺法をストロボ撮影により、剣の残像を残す映像が初めて登場しました。雷サマの作品に限らず、その後の円月殺法を表現するスタンダードな手法となります。また、原作にあったエロティシズムを最大限に引き出し、シリーズの方向性を決定付け、興行的にも大成功した作品。残虐な将軍の娘・菊姫にアヘンを横流しする商人・備前屋は、密輸を黙認させるため老中・水野に隠れキリシタンの情報を流していた。狂四郎は隠れキリシタンの一人から、狂四郎と血の繋がりを持つ尼僧・びるぜん志摩を救って欲しいと頼まれる。狂四郎は自らの出自を問うべく、志摩の救出に向かうが、行く手を菊姫と備前屋の刺客がさえぎる。狂四郎は無事、志摩を救い出したが、意外な黒幕の正体に気が付き…。この作品は、狂四郎シリーズでも雷サマが特に気に入っていたそうです。

8作目の『眠狂四郎 無頼剣』は、狂四郎が自分と同じ円月殺法を操る愛染と対決します。白の衣装を身にまとう円月殺法の使い手・愛染を、『座頭市物語』で市の永遠の宿敵(とも)・平手造酒を熱演した天知茂がここでも名演技を披露。黒の狂四郎に、白の愛染。屋根の上で繰り広げられる同時に回る円月殺法の殺陣は名シーンです。ラスト、紅蓮の炎に包まれる江戸の町を見つめる狂四郎の顔が、炎に照り返されてオレンジ色に映る美しさは、言葉を呑むほどです。余談ですが、『女妖剣』以後、円月殺法は残像を残すストロボ撮影が常となりましたが、三隅監督は第5作『眠狂四郎 炎情剣』と本作でもストロボ撮影は行いませんでした。何故三隅監督がストロボ撮影を使わなかったのかは、残念ながら永遠の謎のままです。

今回ご紹介した作品を含む雷サマの「眠狂四郎」シリーズ全12作品は、『大雷蔵祭』で全て上映されます。次回では、1月に上映予定の狂四郎シリーズの作品紹介をいたします。お楽しみに!

大雷蔵祭

製作年:

史上最大!100作品を一挙上映!
5年ぶりに、市川雷蔵がスクリーンに登場!

眠狂四郎 多情剣

製作年:1966年

罠と知りつゝ女体を抱き、背後に刺客の集団を斬る! 冴えに冴えたり円月殺法!

眠狂四郎 勝負

製作年:1964年

斬るには惜しい相手だが・・・・・・・
勝負は一瞬、鮮血飛んで、
冷たく冴える円月殺法!

眠狂四郎 女妖剣

製作年:1964年

妖しく激しく迫る五つの肌! 抱かんとすれば、襲い来る必殺の拳法! 迫る忍者!

眠狂四郎 無頼剣

製作年:1966年

あいつは俺の影なのだ! 流派も同じ、腕なら互角! 同時にまわる円月殺法! 斬らば斬られる狂四郎の危機!

眠狂四郎 炎情剣

製作年:1965年

犯すもよし、斬るもよし! 冷たく冴える非情の瞳、キラリと光ったその一瞬!