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今月のピックアップ・バックナンバー

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第20回「秋の夜長に社会派映画はいかがですか?」

山崎豊子原作『沈まぬ太陽』が絶賛公開中!
同じく山崎豊子の代表作である『白い巨塔』『華麗なる一族』『不毛地帯』の映画化を手掛けたのは、“社会派映画の巨匠”山本薩夫監督。労働争議で東宝を追われながらも第一線の監督として活躍し、社会派の視点を持ちつつ、作品を一つのエンターテイメントとしてまとめ上げる稀有な存在でした。その手腕により、前述3作のほか、『戦争と人間』などの大作を手掛けました。今月は数ある山本薩夫監督作品から一部を紹介します。

山本薩夫の代表作として、市川雷蔵主演の『忍びの者』が挙げられます。それまで、豪傑のイメージがあった戦国末期の大盗賊・石川五右衛門を、山本薩夫は闘争の手足として使い捨てられる忍者の一人として描き、市川雷蔵が等身大の悩み多き青年として演じ、それまでのイメージを一新し、忍者ブームを起こしました。一人二役を怪演した伊藤雄之助も忘れられません。本作と続編の『続・忍びの者』は「大雷蔵祭」で上映されますので、お楽しみに!

社会派映画の金字塔『金環蝕』は、九頭竜川ダム落札事件という実際の汚職事件をモデルとした石川達三の同名小説が原作の超骨太ドラマです。保守政党総裁の座を巡る買収工作、その穴埋めをする政財界の癒着、政治の舞台裏にうごめく金・権力・女…。こうした重いテーマを一流娯楽大作に仕立て上げる山本薩夫の豪腕ぶりが見物の作品。中でも武一お薦めのシーンは、西村晃演じるゼネコン役員が、どじょうすくいのいでたちでかっぽれを踊るシーン。西村晃のこれ以上ない滑稽さは必見です。

政治を真正面から捉えた『金環蝕』と対照的に、地方政治を風刺喜劇として描いたのが『赤い水』。過疎化の進む地方町が温泉で町おこしを図ろうとするものの、そこに政治家・役人、果ては生臭坊主までが色と欲に目がくらみ、醜い争いを繰り広げます。山本薩夫のふり幅の広さに感嘆。ここでも伊藤雄之助が生臭坊主を怪演、「やり過ぎ」とも一部で批評を受けましたが、彼の演技が堪能できます。

『スパイ』は、田宮二郎演じる新聞記者が日本で暗躍する諜報機関に迫るという異色作。山本薩夫ならではの視点で、日韓問題やベトナム戦争といった当時の国際的緊張を背景に、記者と国際スパイ組織の対決を描くサスペンス作品です。今では製作できない、かなり過激な内容の作品です。

『傷だらけの山河』は、自らの欲望のためには手段を選ばない大事業家が、その非情さゆえに家庭を崩壊させてしまう物語。事業欲達成の為には他人の犠牲も意に介さない冷徹な事業家を、山村聡が好演。後味の悪いラストが何とも言えません。

今月ご紹介の5作品は、全てDVD化されています。この他にも、松川事件を題材にした社会派喜劇の最高峰『にっぽん泥棒物語』、「もし自衛隊がクーデターを起こしたら?」という発想を元に作られた『皇帝のいない八月』も刺激的な作品。

是非この機会にご覧ください。

沈まぬ太陽

製作年:2009年

「魂が、震える。」

白い巨塔

製作年:1966年

誤診という名の殺人! 人の命を救うはずのメスが、野望のためにみがかれる!
謀略が渦巻き、欲望がおどる、日本医学界の内幕!轟然たる反響を呼んだ問題小説を最高のスタッフ・キャストで映画化!
患者の命より名誉と権威が優先す!恐るべき医学界の裏面を鋭くえぐる2時間30分!
田宮二郎主演、医学界の腐敗を暴いた巨匠・山本薩夫の渾身の大作!

忍びの者

製作年:1962年

顔の下からもう一つの顔があらわれる!
忍びの術に命をかけて戦乱の野を去る・・・

金環蝕

製作年:1975年

まわりは金色の栄光に輝いて見えるが、中の方は真っ黒に腐っている

赤い水

製作年:1963年

ヤマ師に、サギ師に、色事師!
田んぼの水で温泉作り?男女混浴?で大当たり!

スパイ

製作年:1964年

密航の目的は?脱走の行方、凍死体の謎は?
事件記者を巻き込んで国際スパイは恐るべき活動を開始した!

傷だらけの山河

製作年:1964年

非情な事業家を描く社会派ドラマ!