角川映画オススメシネマ映子の部屋-EIKO's ROOM-

今月のピックアップ

第69回「大映俳優列伝 〜潮万太郎〜」

前回の「大映俳優列伝」では大映京都撮影所の伊達三郎を紹介しましたが、今回は大映東京撮影所の名脇役、潮万太郎を紹介します。
潮万太郎というと、ご存知の方はちょっととぼけた感じの小太りで眼鏡(若しくはちょび髭)の中年俳優というイメージが強いのではないでしょうか。

潮万太郎の経歴は、1909年2月4生まれ、本名は柴田作次郎。映画界へは営業部員としてスタートしましたが、29年に日活京都撮影所で俳優デビュー。34年に東京・多摩川撮影所に移り、現代劇で愛嬌のあるキャラクターを持つバイプレーヤーとして重宝されました。42年、戦時統合により大映へ移籍、引き続き東京撮影所所属として、現代劇のみならず、時代劇にも出演。66年に大映を退社してフリーとしてテレビに活躍の場を移しました。2000年にご逝去、享年91歳でした。弓恵子は長女で、大映にも所属していました。

バイプレーヤーとして記憶に残る作品として、『蛍の光』(’55)でいつもおやつの時間に一人だけお預けをくらう何とも可笑しい哀愁を誘う職人役、『最高殊勲夫人』(’59)では2組のカップルの結婚式で祝辞をとうとうと述べるひげの紳士。『浮草』(’59)で、嵐駒十郎(中村鴈治郎)率いる一座の呑気な3人組の座員のひとり、仙太郎を演じています。

多くの作品で脇役ながらも嫌味にならない存在感を醸し出す一方、主演作もあります。『しゃぼん玉親爺』(’56)は、妻に頭が上がらないながらも、浮気心のある石鹸会社の社長として主演を張ります。戦時中に二等兵だった社長が、雇った社員は元上官。しかも、浮気相手をめぐって社長・社員・妻が入り乱れて、さぁ大変! 潮のキャラクターを存分に活かした作品です。
『娘の修学旅行』(’56)は、訳あって九州の弟夫婦に一人娘を預け、一人東京でサンドイッチマンとして人気を博す寅吉を演じます。娘には社長になったと伝えていたものの、娘が修学旅行で上京するという。仲間の助けもあって、にわか社長に仕立てられた寅吉ですが、見事ピンチを切り抜けられるのか?

雷サマとの共演もあり、意外にも敵役を演じている時もあります。こういう方が悪役をつとめると、より悪辣さが際立ちますよね。
『切られ与三郎』(’60)では、お富さんを囲う源左ヱ門を演じ、与三郎(市川雷蔵)に刀傷を負わせます。宴会のシーンではひょうきんなキャラクターを活かしていますが、一転お富さんを取られたと分かった途端、悪親分に豹変します。
『破戒』(’62)では、主人公・丑松(市川雷蔵)を精神的に追い詰め、選挙の為ならどんな手段も厭わない町会議員役を演じ、今までにない冷徹なイメージを湧かせます。

選挙と言えば、『白い巨塔』(’66)では、外科病院を経営しつつ大阪市市会議員をつとめる鍋島を演じ、財前(田宮二郎)の教授選をドス黒く応援します。

今月ご紹介した『最高殊勲夫人』『浮草』『切られ与三郎』『破戒』『白い巨塔』は、当社からDVDやBlu-rayを発売しています。

大映よもやま話になりますが、ポスターにおける「カラー」表記ですが、大映総天然色映画第一作『地獄門』(’53)から1966年12月10日公開の『大魔神逆襲』までが“総天然色”と表記され、67年正月第一弾として66年12月24日に二本立て公開された勝新太郎主演『酔いどれ波止場』と田宮二郎主演『出獄の盃』から“カラー”と表記されるようになりました。これは、カラーテレビの普及と関係があるのかもしれませんね。

また、8月23日(金)から角川シネマ有楽町で<没後50年特別企画>「市川雷蔵祭」が開催されます。今回紹介した作品のいくつかが、上映されるかもしれませんね。公式発表をお待ちください!

蛍の光

製作年:1955年

蛍の光のメロディに乗せて、薄倖な姉妹の愛情を中心に、親子愛、恋愛、友情が綾なす多彩な物語!

最高殊勲夫人

製作年:1959年

恋愛から結婚!なんてつまらない!原題の結婚は若い二人の喧嘩から始まる!

浮草

製作年:1959年

愛情は流れゆくもの、恋ははかなきもの・・・全女性の感動を呼ぶ名匠小津安二郎の文芸巨編

しゃぼん玉親爺

製作年:1956年

社長は昔の二等兵、社員はもとの中隊長、奥様内緒の浮気小隊! サテ、その突撃先は?

娘の修学旅行

製作年:1956年

子ゆえに見せたい親の虚栄! 愚かな父と笑いながらも親子の純愛につい泣かされる傑作人情喜劇!

切られ与三郎

製作年:1960年

追われて逃げて夜霧の浜辺! 御用提灯の火の海で、恋が生れて命が消える! 今宵かぎりの切られ与三!

破戒

製作年:1962年

悶え、苦しみ、愛し、果しなき悲しみに耐える孤独の青春!

白い巨塔

製作年:1966年

誤診という名の殺人! 人の命を救うはずのメスが、野望のためにみがかれる!謀略が渦巻き、欲望がおどる、日本医学界の内幕!轟然たる反響を呼んだ問題小説を最高のスタッフ・キャストで映画化!患者の命より名誉と権威が優先す!恐るべき医学界の裏面を鋭くえぐる2時間30分!田宮二郎主演、医学界の腐敗を暴いた巨匠・山本薩夫の渾身の大作!

映子の本棚(書籍紹介)

大映特撮映画大全
大怪獣空想決戦 ガメラ対大魔神

ガメラも大魔神も妖怪も!みんな大好き大映映画!!
日本映画の一時代を築いた、大映映画の「特撮」と「ファンタジー」の魅力を網羅した一冊。
『大魔神』シリーズ、『ガメラ』シリーズ、『妖怪』シリーズなど各作品への豪華執筆陣の寄稿は超貴重!秘蔵スチルも収録!

掲載された作品 『大魔神』シリーズ、『ガメラ』シリーズ、『妖怪』シリーズ
出版社 角川書店 発売日 2010/07/16
著者名 監修:角川映画
価格 1,890円(税込) ISBNコード 978-4-04-854511-2-C0076
詳細 http://www.kadokawa.co.jp/comic/bk_detail.php?pcd=201004000043

雷蔵の色

今なお不動の人気を誇る市川雷蔵のすべてを、斬新な役者論、映画論、時代論で描き切る決定版。
写真、口絵ポスター満載!

掲載された作品 『若き日の信長』『かげろう絵図』『安珍と清姫』『新忍びの者』
出版社 河出書房新社 発売日 2009/07/13
著者名 村松友視
価格 1,680円(税込) ISBNコード 978-4-309-01926-0
詳細 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309019260

日本の美100

25人が選ぶ日本の美100 美の在処を巡って 対談 高橋睦郎×池内紀

掲載された作品 『雨月物語』『お遊さま』『祗園囃子』
出版社 平凡社 発売日 2008/10/24
著者名 梅原猛 磯崎新 横尾忠則ほか
価格 1,890円(税込) ISBNコード 978-4-582-63441-9
詳細 http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/viewer.cgi?page=browse&code=634041

市川崑大全

金田一シリーズ!木枯し紋次郎!東京オリンピック!
ミステリものの名手か?文芸映画の王様か?テクニックの天才か!?
国民的巨匠の表と裏のすべてがこの一冊で分かる!!
(石坂浩二、中村敦夫、岩井俊二ほか関係者証言&フィルモグラフィー完全収録!!)

掲載された作品 『犬神家の一族』
出版社 洋泉社 発売日 2008/12/03
著者名 映画秘宝編集部・編
価格 1,785円(税込) ISBNコード 978-4-86248-339-3
詳細 http://www.yosensha.co.jp/book/b2445.html

大魔神の精神史

放映から40年を経て、謎はいま解き明かされる!甦る大魔神の世界!!

なぜ大魔神は埴輪なのか?なぜ乙女の涙は必要なのか?なぜ大魔神は剣を抜いたのか?
筒井康隆による幻の第四作とは?『モスラの精神史』の著者が、再び日本の文化イコンの謎を一挙解明!! 大魔神から日本が見える!

掲載された作品 『大魔神』シリーズ
出版社 角川書店 発売日 2010/08/10
著者名 小野俊太郎
価格 800円(税込) ISBNコード  
詳細 http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201004000221