角川映画オススメシネマ映子の部屋-EIKO's ROOM-

今月のピックアップ

第70回「没後五〇年特別企画「市川雷蔵祭」」

没後五〇年特別企画「市川雷蔵祭」が8月23日から角川シネマ有楽町で上映開始いたします(順次全国上映する予定です)。
今回は、私大井利一がおススメする作品をご紹介いたします。
因みに本記事のアップした7月17日は雷サマ50回目の御命日。追悼で『眠狂四郎無頼剣』(’66)を観ました。事の発端となる弥彦屋を演じた香川良介は大正から昭和の終わりまで邦画に欠かせない名脇役でした。遺作は『ジャズ大名』(’86)です。

『薄桜記』(’59)は、五味康祐原作を雷サマと最も多くのタッグを組んだ森一生監督による映画化作品。赤穂浪士の仇討を背景に、孤高の剣士・丹下典膳(雷サマ)と堀部安兵衛(カツシン)の交流、典膳と薄倖のヒロイン・千春の純愛が描かれています。ラストの雪が舞い落ちる中、満身創痍となった典膳の大立ち回りは必見! 激しくも美しい殺陣は日本映画史上屈指のものでしょう。

田中徳三監督の『濡れ髪牡丹』(’61)は、「濡れ髪シリーズ」の中でも特に人気の作品で、雷サマは、剣道・柔道・鉄砲・弓に槍・薙刀の武芸は免許皆伝、加えて料理・裁縫・算盤・生花・茶の湯・書道までもプロ級。おまけに忍術、歌舞伎の腕も持つという謎の風来坊やくざを飄々と演じます。京マチ子演じる、三千人の子分を持つ大親分・おもんの婿探しのための試験(これが難関ばかり!)を、口八丁手八丁で次々とクリアしていく雷サマのコメディアンぶりが堪能できます。

雷サマと野心的な作品を多く生んだ三隅研次監督による『婦系図』(’62)は、それまでに何度も映画化されている泉鏡花の同名小説が原作で、現時点では最後の映画化作品。主税とお蔦のコンビは多くの名優たちが演じてきましたが、本作品では新東宝出身の万里昌代が、若尾文子の代役として抜擢されました。公開当時は、和風美人とは対極にある目鼻立ちがしっかりした顔立ちの万里昌代の評判は芳しくなかったようですが、『斬る』(’62)でも雷サマと共演したように相性は抜群! 新東宝ファンでもある筆者は、万里昌代ファンでもあり、本作も魅力的に感じます。万里の下町娘の気風の良さに注目です!

文豪・島崎藤村の代表作の一つでもある部落民問題を扱った同名原作を市川崑監督が映画化した『破戒』(’62)は、出自の秘密を隠す小学校教師・丑松が主人公。難しいテーマでもあり、出自を隠せという父の戒めを守るがため、父の死に目にもあえず、周囲の目を気にしながら、孤独・罪悪感に耐える丑松を雷サマが熱演。市川崑作品に数多く楽曲を提供した芥川也寸志のテーマ曲も必聴! ラストの告白シーンは号泣必至! 因みに本作品がデビュー作の藤村志保は、原作者の名前“藤村”と、劇中で演じた“お志保”を合わせた芸名となったそうです。

私が最初に雷サマをスクリーンで見た作品が、『忍びの者』(’62)! 正直、テレビで見た時(『眠狂四郎殺法帖』スタンダード画面…)は特に印象に残りませんでしたが、スクリーンの中の雷サマは、忍者として暗躍する姿、苦悩する表情、魅惑の口跡、その全ての演技が圧倒的で、私は一発で虜に。学校サボって、三隅研次監督特集の雷サマ作品をハシゴしました。この作品では忍者の生態のリアルさを追求。それまでの“ガマガエルに乗ってドロン”という忍者のイメージを覆しました。

『眠狂四郎勝負』(’64)は、狂四郎が老勘定奉行・朝比奈伊織を助けていくストーリー。以前も紹介したように、江戸の正月風景、五人の刺客との対決なども見逃せませんが、今回は視点を変えて、朝比奈の「貧しい者と富める者の差が酷すぎるのだ。これではいかん。このままでは」という台詞に着目! 今のご時世にも通ずるもの。そんな視点で観ると新たな発見があるかも!?

『ひとり狼』(’68)はウイリー・沖山の主題歌も印象に残る、池広一夫監督による股旅映画の最高峰ともいえる作品! 伝説的な一匹狼のやくざ・追分の伊佐蔵は、浪人を斬った後に「今夜もまた、この目の中に新しい卒塔婆を一本立てるのか」というニヒルな台詞を述べます。ともすればキザな台詞と受け取れますが、それを嫌味なくサラリと演じられる雷サマの凄みを堪能できます!

今回のお宝上映は新たに発掘された『旅はお色気』(’61)! 雷サマは助監督時代に苦楽を共にした仲間の監督昇進記念で何作も友情出演されていますが、この作品はカツシンと共にご出演、「大魔神シリーズ」で特撮を担当された黒田義之監督の昇進記念です。

今月ご紹介した作品は、「市川雷蔵祭」で上映されます。既にご覧になった方には懐かしく、未見の方には新たな魅力が感じられる作品だと思います。角川シネマ有楽町での上映スケジュールはこちらをご確認ください。

薄桜記

製作年:1959年

武道の意地か、男の友情か、帰らぬ恋の悲憤を秘めて、今ぞ斬る隻腕知心流!

濡れ髪牡丹

製作年:1961年

市川雷蔵×京マチ子腕っ節なら度胸なら男勝りの大姐御と、なんでもござれの旅鴉が、剣と色との果し合い!

婦系図

製作年:1962年

恋ゆえ強い女の意気地!死して貫く女のまこと!香気あふれる純愛巨篇!

破戒

製作年:1962年

悶え、苦しみ、愛し、果しなき悲しみに耐える孤独の青春!

忍びの者

製作年:1962年

顔の下からもう一つの顔があらわれる!忍びの術に命をかけて戦乱の野を去る・・・

眠狂四郎 勝負

製作年:1964年

斬るには惜しい相手だが・・・・・・・勝負は一瞬、鮮血飛んで、冷たく冴える円月殺法!

ひとり狼

製作年:1968年

おれにドスを抜かせるな、無残な死人がまたふえる!木曽の夕日に冷たく笑う 一本どっこの凄い奴!

旅はお色気

製作年:1961年

東海道は女難旅! ピンクムードの剣難道中!市川雷蔵、勝新太郎が友情出演! 

映子の本棚(書籍紹介)

大映特撮映画大全
大怪獣空想決戦 ガメラ対大魔神

ガメラも大魔神も妖怪も!みんな大好き大映映画!!
日本映画の一時代を築いた、大映映画の「特撮」と「ファンタジー」の魅力を網羅した一冊。
『大魔神』シリーズ、『ガメラ』シリーズ、『妖怪』シリーズなど各作品への豪華執筆陣の寄稿は超貴重!秘蔵スチルも収録!

掲載された作品 『大魔神』シリーズ、『ガメラ』シリーズ、『妖怪』シリーズ
出版社 角川書店 発売日 2010/07/16
著者名 監修:角川映画
価格 1,890円(税込) ISBNコード 978-4-04-854511-2-C0076
詳細 http://www.kadokawa.co.jp/comic/bk_detail.php?pcd=201004000043

雷蔵の色

今なお不動の人気を誇る市川雷蔵のすべてを、斬新な役者論、映画論、時代論で描き切る決定版。
写真、口絵ポスター満載!

掲載された作品 『若き日の信長』『かげろう絵図』『安珍と清姫』『新忍びの者』
出版社 河出書房新社 発売日 2009/07/13
著者名 村松友視
価格 1,680円(税込) ISBNコード 978-4-309-01926-0
詳細 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309019260

日本の美100

25人が選ぶ日本の美100 美の在処を巡って 対談 高橋睦郎×池内紀

掲載された作品 『雨月物語』『お遊さま』『祗園囃子』
出版社 平凡社 発売日 2008/10/24
著者名 梅原猛 磯崎新 横尾忠則ほか
価格 1,890円(税込) ISBNコード 978-4-582-63441-9
詳細 http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/viewer.cgi?page=browse&code=634041

市川崑大全

金田一シリーズ!木枯し紋次郎!東京オリンピック!
ミステリものの名手か?文芸映画の王様か?テクニックの天才か!?
国民的巨匠の表と裏のすべてがこの一冊で分かる!!
(石坂浩二、中村敦夫、岩井俊二ほか関係者証言&フィルモグラフィー完全収録!!)

掲載された作品 『犬神家の一族』
出版社 洋泉社 発売日 2008/12/03
著者名 映画秘宝編集部・編
価格 1,785円(税込) ISBNコード 978-4-86248-339-3
詳細 http://www.yosensha.co.jp/book/b2445.html

大魔神の精神史

放映から40年を経て、謎はいま解き明かされる!甦る大魔神の世界!!

なぜ大魔神は埴輪なのか?なぜ乙女の涙は必要なのか?なぜ大魔神は剣を抜いたのか?
筒井康隆による幻の第四作とは?『モスラの精神史』の著者が、再び日本の文化イコンの謎を一挙解明!! 大魔神から日本が見える!

掲載された作品 『大魔神』シリーズ
出版社 角川書店 発売日 2010/08/10
著者名 小野俊太郎
価格 800円(税込) ISBNコード  
詳細 http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201004000221