角川映画オススメシネマ映子の部屋-EIKO's ROOM-

今月のピックアップ

第74回「戦後75年 映画で振り返る太平洋戦争」

現在、日本はコロナウイルスの影響で、様々な苦難に陥っています。しかし、忘れてならないのは今年が戦後75年という節目の年でもあります。先人の苦難に想いを馳せ、再び戦火が訪れないことを祈ることも重要だと思います。
そこで、映画を通して太平洋戦争を振り返りたいと思います。

戦時中、映画は“国威高揚”の手段として利用されました。『空の少年兵』(’40)は海軍飛行予科練習生の訓練を描き、『勝利の基礎』(’41)江田島海軍兵学校で学ぶ生徒を描いた共にドキュメンタリー映画です。公開時はまだ太平洋戦争には突入していませんが、日中戦争は始まっており、海軍のアピールと共に、海軍に志願させる狙いがあったのではないでしょうか。
1944年11月公開の『かくて神風は吹く』は、鎌倉時代の“元寇の役”を描いた作品ですが、公開直前には“神風特別攻撃隊”が組織されており、もはや神頼み・精神論で乗り切るしかなく、戦局は悪化していたことが分かります。

実話をもとに満州に取り残された女性・子供の必死の逃避行を描いた『死の街を脱れて』(’52)や、戦犯となった息子の母親の苦衷を描いた『巣鴨の母』(’52)、サイパンで玉砕した兵士たちの無念を描いた『姿なき一〇八部隊』(’56)など、戦後まもなくは戦地の実態や終戦時の混乱、「戦争責任とは?」という問題をテーマにした作品が作られるようになりました。

戦争を青春ドラマとして描かれ始めたのは、『海軍兵学校物語 あゝ江田島』(’59)からで終戦後15年近くのことになります。
根強い人気がある「悪名シリーズ」でも戦争の影響が描かれた作品があります。『続・悪名』(’61)では、勝新太郎演じる八尾の浅吉に赤紙が届き、田宮二郎演じるモートルの貞が涙ながらに「犬時にするな、無事に帰ってきてくれなはれ」と願う場面は名シーンの一つです。
戦争は人間から感情・理性を奪い、人間ではなくなる面があります。『陸軍中野学校』(’66)は、日本の極秘スパイ訓練機関「中野学校」の実態をドライに描いた異色作。陸軍少尉・三好次郎は、スパイになるため肉親・婚約者との連絡も閉ざされ、戸籍まで抹消され、別の人間として活動することとなる、しかし、これは悲しい結末を迎えることになります。市川雷蔵が三好を演じ、スパイとしての使命を受けた悲哀・非情さ・苦しみを魅せてくれます。
最前線の戦場という極限状態の下、果して愛は貫き通せるか?、という人間本能の問題を問う『赤い天使』(’66)は根強い支持があります。
『海兵四号生徒』(’71)は、ともすれば美談に描きがちだった「あゝシリーズ」とは異なり、実際に海軍兵学校を卒業し、従軍経験のある豊田壌の原作を元に清々しくもドライなタッチで描いた隠れた名作です。

私、大井利一の名は、母方の三人の祖父の中の次兄からいただきました。“三人”と書いて、不自然に思われる方もいらっしゃると思います。古い因習の残っていた母方の家に嫁いだ祖母は、長兄と結婚しました。しかし、長兄は戦死。“女に家、と書いて嫁”という風に、祖母は次に次兄と結婚します。この次兄が私の本当の祖父です。しかし、この次兄もフィリピンで戦死し、骨も見つかりませんでした。祖母は最後に、私の記憶がある末っ子だった祖父と結婚します。夫を戦争で二人無くしていた祖母の願いは「夫より先に天国に行きたい」でした。祖母に可愛がってもらっていた私は不思議でしたが、色々と歴史を知るにつれ、なんとなく分かる気がしました。そして、数十年前に祖母の願いは叶えられました。しかし、私は「こんな悲しい願いを生む戦争は、庶民が苦しむだけだ」と思うようになりました。戦死者は数字だけで語られることばかりですが、そのひとりひとりに親・兄弟姉妹がいて、妻・子供もいるのです、生活があるのです。
このコラムを読んでいただいた方が、「戦争とは何か?」を考えていただけると嬉しいです。

今月ご紹介した作品は、全てDVDが販売されています。遠出がしにくい状況ですが、この夏は映画で戦争について考えてみるのはいかがでしょうか。

死の街を脱れて

製作年:1952年

若尾文子の記念すべきスクリーンデビュー作!いっそう殺してくれ!と叫ぶ女・女・女・暴徒と野犬の襲撃に戦きながら、動乱の大陸に日本婦女子が辿る逃避行三千里!

巣鴨の母

製作年:1952年

愛する息子が戦犯に…母は待ちます、何時までも…

姿なき一〇八部隊

製作年:1956年

深夜の東京駅に音もなく到着した半透明列車!魂の帰還をした兵士たちは、妻を、子を、恋人を求めて・・・しみじみ迫る感動の珠玉篇!

海軍兵学校物語 あゝ江田島

製作年:1959年

海国日本の華と謳われた海軍兵学校生徒の愛と苦悩を描いて無限の感動を呼ぶ!

続・悪名

製作年:1961年

河内のチンピラから大親分に!悪名轟く朝吉を、待つは火の恋か、暴力の罠か!

陸軍中野学校

製作年:1966年

世界を震撼させた日本のスパイ訓練機関、ついにあばかれた中野学校の秘密とは?

赤い天使

製作年:1966年

天使か娼婦か!兵隊の欲望に女の愛がやさしく応える! 血と泥の戦場に真実のいのちを求める従軍看護婦!

海兵四号生徒

製作年:1971年

殴る青春!ひたむきの激情!そこに男がある!誇り高き海兵魂がある!生命がもえる!青春がきらめく!怒号と鉄拳と血のにじむ訓練の中で、若者たちは何を求めたのか!今、この青春があるように、そのときも、また、たしかに青春があった、雄々しい海鳴りのように・・・・・

映子の本棚(書籍紹介)

大映特撮映画大全
大怪獣空想決戦 ガメラ対大魔神

ガメラも大魔神も妖怪も!みんな大好き大映映画!!
日本映画の一時代を築いた、大映映画の「特撮」と「ファンタジー」の魅力を網羅した一冊。
『大魔神』シリーズ、『ガメラ』シリーズ、『妖怪』シリーズなど各作品への豪華執筆陣の寄稿は超貴重!秘蔵スチルも収録!

掲載された作品 『大魔神』シリーズ、『ガメラ』シリーズ、『妖怪』シリーズ
出版社 角川書店 発売日 2010/07/16
著者名 監修:角川映画
価格 1,890円(税込) ISBNコード 978-4-04-854511-2-C0076
詳細 http://www.kadokawa.co.jp/comic/bk_detail.php?pcd=201004000043

雷蔵の色

今なお不動の人気を誇る市川雷蔵のすべてを、斬新な役者論、映画論、時代論で描き切る決定版。
写真、口絵ポスター満載!

掲載された作品 『若き日の信長』『かげろう絵図』『安珍と清姫』『新忍びの者』
出版社 河出書房新社 発売日 2009/07/13
著者名 村松友視
価格 1,680円(税込) ISBNコード 978-4-309-01926-0
詳細 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309019260

日本の美100

25人が選ぶ日本の美100 美の在処を巡って 対談 高橋睦郎×池内紀

掲載された作品 『雨月物語』『お遊さま』『祗園囃子』
出版社 平凡社 発売日 2008/10/24
著者名 梅原猛 磯崎新 横尾忠則ほか
価格 1,890円(税込) ISBNコード 978-4-582-63441-9
詳細 http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/viewer.cgi?page=browse&code=634041

市川崑大全

金田一シリーズ!木枯し紋次郎!東京オリンピック!
ミステリものの名手か?文芸映画の王様か?テクニックの天才か!?
国民的巨匠の表と裏のすべてがこの一冊で分かる!!
(石坂浩二、中村敦夫、岩井俊二ほか関係者証言&フィルモグラフィー完全収録!!)

掲載された作品 『犬神家の一族』
出版社 洋泉社 発売日 2008/12/03
著者名 映画秘宝編集部・編
価格 1,785円(税込) ISBNコード 978-4-86248-339-3
詳細 http://www.yosensha.co.jp/book/b2445.html

大魔神の精神史

放映から40年を経て、謎はいま解き明かされる!甦る大魔神の世界!!

なぜ大魔神は埴輪なのか?なぜ乙女の涙は必要なのか?なぜ大魔神は剣を抜いたのか?
筒井康隆による幻の第四作とは?『モスラの精神史』の著者が、再び日本の文化イコンの謎を一挙解明!! 大魔神から日本が見える!

掲載された作品 『大魔神』シリーズ
出版社 角川書店 発売日 2010/08/10
著者名 小野俊太郎
価格 800円(税込) ISBNコード  
詳細 http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201004000221