ラヴェンダーの咲く庭でLADIES IN LAVENDER
それは、短く幸せな夏。
イギリスの田園を舞台に、2人の姉妹と異国の青年ヴァイオリニストが織り成す人生の宝石箱。
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Introduction -プロダクションノート-
プロジェクトが成立するまで
「ある作品をブタペストで撮影している間、待ち時間に退屈してなにげなく衣裳部屋に置いてあった一冊の本を手にとってみた。それが、ウィリアム・J・ロックの小説だったんだ」。
これが初監督となるチャールズ・ダンスは「ラヴェンダーの咲く庭で」が生まれた瞬間をこう語る。「『Faraway Stories』という短編集の中の一編なんだが、撮影後もいつもそばにおいてページをめくっていたんだ。そのうちにこの短編小説を脚本化しようと思い立ち、まずはシノプシスを書いて、すぐに第一稿の脚本を書き上げることになったんだ。原作が短編小説なので、何度も推敲して丹念に書き込んでいった。原作では、物語の舞台は1900年代の終りという設定になっていたんだが、時代設定を1936年に変えた。ラジオを通じてアンドレアが音楽で村に帰ってこれるようにしたかったし、歴史的にも動乱の時代だったから。主人公の姉妹の年齢も原作では40代の女性だったが、私はもう少し年配の初老の姉妹に仕立て上げたんだ」。
脚本を渡されたプロデューサーのニコラス・ブラウンは語る。「読んでみて驚いたよ。ダンスは短い物語をみごとに膨らませ、長編映画にふさわしく脚色していた。しかも、ジュディ・デンチとマギー・スミスが主演だというし、もう半分は成功していたようなものだよ」。そして、映画が仕上がったときに「これは大成功の例だ」とブラウンは手放しで喜んだ。
「ダンスの監督としての手腕は申し分ない。チームワークも素晴らしかったし、役者たちの演技を引き出す力には恐れ入った。長年の夢でもあったから、彼自身もそのことを肝に銘じて撮影に臨んだようだった。彼以外にこの映画を撮れる人間はいなかっただろう」。
この役をこなせる女優は、この世に2人しかいない
「脚本化する際にこの主演の2人の女性には誰をキャスティングしようかと考えていたんだが、すぐに答えは出たよ。私が知っている限り、この役をこなせる女優は、この世にふたりしかいないからね」。ダンスは言う。「いかんせん役者というものは、年をとってくると役が減ってくるものなんだ。特に女優の場合はその傾向が強いかもしれない。この2人の本当に素晴らしい女優たちにとって、その実力を披露するいい機会になるのではないかと考えたんだ」。
ちょうど、マギー・スミスと舞台「Breath of Life」で共演していたデンチは本作の話を持ちかけられた時のことをこう振り返る。「チャールズと一緒にランチをしてこの話を聞いた時、"素晴らしいわ!やらせてちょうだい"って即答したのよ」。
キャストやスタッフたちは、デンチとスミスの信頼関係と強い結束力に驚いたという。おかげでセットはいつでも笑いに包まれ、終始楽しい雰囲気の中で撮影が行われた。「なにか2人にしか通じない共通言語のようなものがあったみたい」。共演者の1人、オルガを演じたナターシャ・マケルホーンが証言する。「それは、本読みの時にすでに感じていたことなんだけど、その共鳴が結果的によく本編に反映されていると思う。2人の信頼の絆はとても強く、ほとんど姉妹同然だったわ。まさに役どころにぴったりな関係だと言えるわね」。
アンドレアを演じるダニエル・ブリュールの驚異的な才能
アンドレアという男は、無垢な青年で、若さゆえに自分の才能にまだ気づいていない。決して易しい役柄ではないが「グッバイ、レーニン!」を見て監督はダニエル・ブリュールの驚異的な才能を見出したと言う。
「彼はまるでカメレオンのように変幻自在な演技ができる。羨ましいほどだった。平坦で尖った表情をしたかと思えば、次の瞬間には、圧倒的に魅力的な表情を振りまく。まさに私がアンドレアに求めていたものだ。難易度の高いヴァイオリンの演技にしてもジェフリー・ラッシュが『シャイン』で実在のピアニストの役をこなすのに6ヶ月練習したと聞いていたが、彼はたったの1ヶ月でそれをこなしてしまったんだ。彼が現場に現れる度に、正しい選択だったと思い知らされたよ」。
また、ブリュール自身は、ジュディ・デンチやマギー・スミスといった大御所と共演できることで、とにかく興奮していた。「あんな大女優たちと共演できるなんて、本当に光栄なことだ。こんなチャンスを逃す手はないと思ったよ。ふたりともとてもフレンドリーでオープンな性格で、おかげで僕は臆することもなくのびのびと参加させてもらえたんだ」。
そして、チャールズ・ダンスが監督だったことも、至上の喜びだったと言う。「実は役者経験を持つ監督の作品に出るのは初めてのことだったんだ。監督はきちんと役者が知りたいことを伝えてくれるし、物語のメッセージも分かりやすく説明してくれたよ」。
音楽を担当した作曲家ナイジェル・ヘスは語る
「チャーリーから脚本が送られてきた時は、本当に驚いたよ。彼は普段作曲家が体験し得ないような貴重なオファーをしてくれたからね」。現在まで数々の作品の音楽を担当してきたナイジェル・ヘスは当時を振り返る。「音楽担当というものは編集作業が済んだ頃にようやく呼ばれる。だが今回は主人公の1人が音楽家であるために、最初から作曲家である私が製作に関わることになり、彼は私をコーンウォールの撮影現場まで招待してくれたんだ」。
ヘスは、アンドレアが劇中で弾く曲や寝室で彼が練習するシーンの数小節のメロディ、クライマックスシーンのコンサート曲まで幅広くスコアを必要としていたので、既存の楽曲よりもオリジナル曲を使うべきだと考えた。全編を通して同じテーマの旋律で印象をつけるためだ。「作曲家にとってこの作品はまるで天国からの贈り物だよ。ロイヤル・フィルハーモニック楽団の演奏は完璧としか言いようがないし、何より、この作品に関わって一番良かったと思うのは、ジョシュア・ベルという素晴らしいヴァイオリニストに出会えたことだ。彼の演奏を聴いていると、とてつもなく高価なロールス・ロイスに乗り込むときのように気分が高揚してくる」。
あまりの素晴らしさにヘスはサントラ用に、ジョシュアとロイヤル・フィルハーモニックで別のセッションも録音しておいたと言う。「シーンで使われた旋律に加え、レパートリー曲も録音した。映画の中では部分的に聞こえてくるバッハも、サントラでは全曲聴くことが出来るように」。
映画が観客に与える印象のひとつに、音楽の持つパワーという面を忘れることは出来ないが、ヘスは「これは音楽がドラマをより一層引きたたせた最高の例である」と語っている。
