Introduction -イントロダクション-

世界は知らなかった。光州で散った愛の数を…。

 韓国・光州市。平和なこの町に住む市民の前に、突然悲劇は訪れた。25,000余名の戒厳軍が民主化を要求する学生らと衝突し、軍の弾圧は多くの市民をも巻き添えにした。
1980年5月18日に始まった〈光州事件〉。韓国では〈5・18光州民主化運動〉と呼ばれる、10日間にわたる悪夢の勃発だ。
一瞬にして戦場と化した状況の中で、何の抵抗も出来ない市民は、恐怖に打ち震え、ただ逃げ惑うばかりだった。
兄弟が、恋人が、父が、愛する息子が…。彼らは極限の中で、ただ愛するものを守りたいという本能で、戦いを挑んでいくのだが…。
多数の死傷者を出した〈光州事件〉は、当時韓国内ではマスメディアの情報操作によって、その悲劇は正確には伝えられなかった。
ニューヨーク・タイムズを始め、海外メディアの外信によって、事件は初めて公にさらされたのだ。


今、初めて描かれる、魂を揺さぶる衝撃のヒューマンドラマ
弟を失い、愛する君までも、失いたくない…。かけがえのない愛と命の物語。

 タクシー運転手のミヌは、困っている老人がいればタダでタクシーに乗せて料金を自分で払うような、純朴で心優しい青年。早くに両親をなくした彼は、高校生の弟ジヌの親代わりでもあり、家事の一切も担って成績優秀な弟が名門ソウル大学に入学する日を心待ちにしている。天使のように心も姿も美しい看護師のシネに恋している彼は、不器用ながら押しの一手で彼女にアプローチ中だ。稲穂が緑に輝く5月、ミヌはシネとジヌとともに映画館でコメディ映画を楽しんでいた。その時、映画館の外では、悪夢の事件が起きていた…。
 政治には無関心だったミヌだが、親友を軍に殴り殺されたジヌがデモを率先し、負傷者の介護に追われるシネの姿を目の当たりにするうちに、やがて彼自身も市民軍の一員として立ち上がる決意をする。その決意を促したのは、ミヌがもっとも恐れていたことが現実になったからだった…。
 ミヌは、ただその現実が夢であることを願った。軍の銃弾に倒れた弟のジヌ。かけがえのない愛と命が次々と犠牲になっていった…。


〈光州の悲劇〉を史上初めて完全映画化。『シルミド/SILMIDO』『ブラザーフッド』につづき、韓国近代史の闇を正面から描く、歴代興行収入トップ10入りの感動作。

 家族思いの青年ミヌを通して描かれる〈光州事件〉。1979年10月の朴正熙(パク・チョンヒ)大統領暗殺後に束の間訪れた民主化への兆しは、クーデターにより権力を握った新軍部勢力によってもぎ取られ、非常戒厳令が全国に拡大した。主要都市および大学に戒厳軍が駐屯し、民主化を熱望する人々の動きを封じ込めようとしたのだ。〈光州事件〉は、全斗煥(チョン・ドゥファン)による軍事クーデターに抗議する学生デモへの戒厳軍の激しい暴行から端を発したもので、学生と市民は武器をとって戒厳軍に立ち向かった。本作は、彼ら市民軍が鎮圧される5月27日までの動きを克明に描き出して、息子を、父を、夫を、弟を、友を、無惨に殺された人々の嘆きに正面から向き合う。この韓国近代史の闇の中から浮かび上がるのは、人が人を愛することの深さと重み、そして命の重さにほかならない。
 「光州5・18」は総製作費100億ウォン(約12億円)を投入し、商業映画としては史上初めて〈光州事件〉を真っ向から取り上げた。2007年7月に韓国で公開。観客動員740万人を超える大ヒットとなり、歴代韓国映画興行収入8位に輝いている。


愛の深さを感動的に演じきる韓国最高のキャストが集結!

 たったひとりの家族である弟のためにキムチを漬け、キムチチゲを作る、タクシー運転手の青年ミヌ。年の離れた弟と互いにけなしあいながら、そこには太い絆が結ばれていることがありありとわかる。彼はまた、片思いしている女性を守るためには一切の労苦を惜しまない。この純朴にして懐の深いミヌを演じるのは、『殺人の追憶』の刑事役や『気まぐれな唇』のダメ男役を好演してきた、キム・サンギョン。秀才で友情にも厚く、自分のことよりも兄の恋の成功を優先する弟ジヌを演じるのは、『王の男』や『初雪の恋〜ヴァージン・スノー』などで独特の魅力を放つイ・ジュンギ。そして、ミヌの片思いの相手であり、献身的な看護師として働く女性シネを演じるのは、『子猫をお願い』のイ・ヨウォン。悪夢の10日間を耐え抜く彼女の表情ひとつひとつが悲劇の深さをありありと伝える。シネの父親で、市民軍を率いる元大佐役に扮する、韓国映画の重鎮アン・ソンギの、作品全体に重みを与える演技も必見だ。また、パク・チョルミン、パク・ウォンサン、ソン・ジェホ、ナ・ムニ、イ・オル、ソン・ビョンホ、チョン・インギら、多くの個性派俳優が作品を豊かに彩っている。