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今月のピックアップ・バックナンバー

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第72回「大映俳優列伝 〜船越英二〜」

一人の俳優に偏って取り上げたり、マニアックな俳優を取り上げてまいりましたが、今回は大映出身で古い映画ファンにはなじみのある船越英二をご紹介をします。因みに、さまぁ〜ず・大竹の氏のモノマネは絶品です。

先ずは、船越英二の経歴をご紹介。1923年3月17日の新宿生まれ。41年に専修大学に進学しますが、44年に学徒出陣で陸軍へ。復員後、地元で商売を始めたものの、兄の友人が冷やかしで大映第2期ニューフェイスに応募したところ合格してしまい、47年3月から大映東京撮影所演技研究所に通い、4月には大映と専属契約を結びました。デビュー作は『第二の抱擁』(’47)。当初は本人が望まぬして進んだ俳優業に身が入らず、与えられる役も“好青年”ばかりで、印象が薄かったそうです。
最初の転機は『安宅家の人々』(’52)で、知的障害を持ち無垢な心を持つ名家の当主を演じ、好評を得て、演技派俳優の片りんを見せました。しかし、再びホームコメディの好青年役が続きます。
第二の転機は市川崑監督との出会いです。最初の出演作である『日本橋』(’56)は巡査役でほんの助演でしたが、『満員電車』(’57)ではモーレツサラリーマン、『穴』(’57)では冷酷な悪党を演じ、演技派俳優として頭角を現します。そして、『野火』(’59)では極限状態におかれた敗残兵・田村一等兵という主人公に扮し、数多くの映画賞を受賞しました。以後も、多くの市川作品に出演しました。
大映倒産後は主に活躍の場をテレビに移し、「時間ですよ」(’70、TBS)や「熱中時代」(’78・80、日本テレビ)、「暴れん坊将軍」(’88〜96、テレビ朝日)などに出演。主人公を温かく見守る役を多く演じました。私生活では、58年に女優の長谷川裕見子と結婚、60年には長男として船越英一郎が誕生。65年には湯河原温泉で「旅荘船越」を創業しました(筆者も定宿として利用させていただきましたが、現在は残念ながら廃業)。2001年のテレビ時代劇出演を最後に俳優を引退、2007年3月17日にご逝去、生没同日でした。

それでは、大井利一おススメの作品をご紹介!
先ずは主人公を徹底的にいじめ抜く悪役を演じた『金色夜叉』(’54)。貫一・お宮の仲を裂き、お宮に結婚を強要した富山を憎々しく演じ、お宮を不幸のどん底に追い込む鬼畜っぷりです。

漫才を披露したのが、『スタヂオはてんやわんや』(’57)。撮影所の様子を描いた内幕モノで、高松英郎とコンビを組み、船越英二がツッコミ役、高松英郎がボケ役で、船越英二は乗りツッコミまで披露!

当時としては珍しい、原作・愛新覚羅浩、監督・田中絹代、脚本・和田夏十と主要スタッフが女性で製作された『流転の王妃』(’60)では、愛新覚羅浩を模した京マチ子演じる主人公の誠実な夫役を演じました。

木村恵吾監督のセルフリメイク『痴人の愛』(’60)では、叶順子演じる奔放な女性・ナオミに振り回される譲治役をMっ気たっぷりに熱演!

時代劇の初主演を務めたのは『怪談蚊喰鳥』(’61)。金と色にとりつかれた人間の業を描く本作で、按摩の兄弟を一人二役で演じ、観る人を恐怖のどん底に叩き込みます!

市川崑監督作品では、妻・愛人を含めた十人の女性から愛憎を向けられる、飄々としてどこか憎めないテレビプロデューサーを演じた『黒い十人の女』(’61)、主人公のぼく(2歳の赤ちゃん)を悪戦苦闘しながら育児するお父さんを演じた『私は二歳』(’62)が特に印象に残ります。

師匠の市川崑監督とは違ったアプローチで“人間の業”を描き続けた増村保造監督作品にも多く出演。『現代インチキ物語 騙し屋』(’64)では、「人様からお金をだまし取るが、悪いことはしていない」と大見得を切る、四人の騙し屋。その一員・河豚を熱演、大阪を舞台にしたエネルギッシュ溢れた作品です。『卍』(’64)では、いびつな三角関係に陥ってしまう、どこか頼りない弁護士役を務めました。そして、船越英二の怪演が堪能できるのが『盲獣』(’69)。江戸川乱歩の原作を大胆にアレンジし、出演者はわずか3人、ほとんどが1セットで撮影された“猟奇的な純愛映画”に仕上がっています。盲目が故に触覚から芸術を愛でる主人公・蘇父道夫を演じ、千石規子演じる母・しのの過剰な愛情をもって、緑魔子演じるファッションモデル・島アキを監禁します。アキは道夫を憎悪するものの、次第に心境に変化が生じ、道夫の価値観に共有していき、最後には……。是非、その目で衝撃的なラストをご確認ください!

昭和ガメラシリーズでは、第1作『大怪獣ガメラ』(’65)と、第5作『ガメラ対大悪獣ギロン』(’69)で、共に博士役で出演。作品に深みを与えました。

今月ご紹介した作品のうち『第二の抱擁』『安宅家の人々』『金色夜叉』『スタヂオはてんやわんや』以外は、当社からDVDやBlu-rayを発売しています。年末年始は、是非、船越英二の演技に酔いしれてください!

第二の抱擁

製作年:1947年

夫の愛に裏切られた若妻の耳に甘美な夢を囁くこの男は、悪魔の使者か? 愛の使徒か?昭和の名優、船越英二のデビュー作!

安宅家の人々

製作年:1952年

貴女はこの姉と義妹の生き方のどちらを選びますか? 全日本の若き乙女と妻に贈る吉屋信子評判小説の大映問題巨篇!

野火

製作年:1959年

野火燃ゆるレイテの戦場にとらえた異常な真実!魂を失った人間の極限を描く、ヒューマンの香り高い市川崑の傑作!

金色夜叉

製作年:1954年

熱海の海岸散歩する貫一・お宮の二人連れ文豪・尾崎紅葉の悲恋の名作絢爛の色彩をもって完全映画化

スタヂオはてんやわんや

製作年:1957年

憧れの大映スタアが総出演で、二度と見れない隠し芸大会を総天然色で公開します!

流転の王妃

製作年:1960年

女だけが知る愛のきびしさと愛の深さ!女性の原作(愛新覚羅浩)、女性の脚本(和田夏十)、女性の監督(田中絹代)、女性の主演者が全女性に贈る涙の名篇!

痴人の愛 [1960]

製作年:1960年

狂った欲望と、歪んだ愛撫に育てられた痴情の女! 文豪谷崎不朽の名作に、叶順子が体当たり!

怪談蚊喰鳥

製作年:1961年

大映が真夏に放つ『怪談蚊喰鳥』は人間の業ともいうべき、凄まじき物欲と色欲に対するあくなき執着が巻き起こす悲劇を描く、宇野信夫の原作を映画化したものでございます。