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今月のピックアップ・バックナンバー

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第71回「雷サマから愛された池広一夫監督!」

大映京都撮影所出身で、今もテレビ朝日系列「終着駅シリーズ」の監督として活躍されている池広一夫監督。先日、「市川雷蔵祭」の舞台挨拶で登壇されましたが、今回は、私大井利一がその模様を紹介しつつ、池広監督の作品も紹介いたします。
先ずは、池広監督の経歴をご紹介。1929年10月25日生まれ。50年に大映京都撮影所に助監督として入社し、溝口健二・吉村公三郎・森一生・市川崑監督らの作品につきます。そして、『薔薇大名』(’60)で監督デビューし、監督3作目『沓掛時次郎』(’61)で雷サマと初タッグを組み、以後数多くの雷サマ作品のメガフォンを取ります。「眠狂四郎シリーズ」、「忍びの者シリーズ」、「座頭市シリーズ」の主要監督の一人として大映時代劇を支えました。大映倒産後も映画を撮り続け、先日お亡くなりになった京マチ子さんの映画最終出演となった、『化粧』(’84・松竹)の監督を務めました。以後は、テレビに活躍の場を移し、現在に至ります。

8月31日に行われた『ひとり狼』(’68)上映後の舞台挨拶で雷サマとの秘話をお話しくださいました。

度々助監督として雷サマと接していた池広監督ですが、『炎上』(’58)の主演に雷サマが決まった時、「スターの地位が失われる」と最初はガッカリしたとのこと。しかし、撮影が進むにつれ不安は払しょくされました。そんな撮影中のある日、雷サマから池広監督に演技の意見を求められ、「(溝口吾市役は)全部どもるのではなく、タ行だけどもるにしたら」と助言し、そこから仲良くなったそうです。池広監督は「普通に助監督をしていても監督に昇進できない。風刺映画の脚本を書き続けた」そうで、ある日雷サマから「僕を利用して監督になれよ。君が(監督として)一人前になったら、僕が利用させてもらうよ」と言われたそうです。

デビュー作の『薔薇大名』はキネマ旬報で評価されたものの、2作目の風刺映画『天下あやつり組』(’61)で永田雅一社長が作品内容に激怒し、ラストシーンの撮り直しを命令されました。監督を続けることが困難となりかけた池広監督に救いの手を差し伸べたのが雷サマ! 「(自身の主演が決まっていた) 『沓掛時次郎』を池ちゃん(池広監督)でやってくれ!」と会社に掛け合ったとのこと。やりつくされた題材で、“靴下履次郎”とも揶揄された本作を雷サマは「若手監督に撮ってもらえば良い作品になる」と思われたようです。池広監督は“助監督時代9年間の夢だった”という宮川一夫さんに撮影をお願いし、宮川さんからは「分かった。好きなように撮ってくれ」と言われたそうです。このことから池広監督は「雷ちゃんは、“大親友”であり、“大恩人”」と語られました。

池広監督は「役者は2つに分けられる。一つは“役を自分のものにする役者”、もう一つは“自分を役に入り込む役者”。雷ちゃんは間違いなく後者だった。撮影前はディスカッションを重ねるが、撮影が開始されたら監督に従ってくれた」とも語られました。

「眠狂四郎シリーズ」4作目『眠狂四郎女妖剣』(’64)を撮ったいきさつについて、「会社からは『池広に狂四郎を撮らせる。ヒットしなかったら、狂四郎シリーズはやめる』と言われた」とのことで、池広監督は「眠狂四郎を手掛ける上で、三つの柱を考えた。一つは“エロティシズム”、二つ目は“狂四郎が何故、神を信じないのか?”を描く事、三つめは“円月殺法が強いこと”を如何に表現するか?」と語られました。“ストロボ撮影(円月を描く剣の残像が残る撮影方法)”やエロティシズムに溢れるストーリー、キリスト教への狂四郎の態度など、以後シリーズの方向性を決定づけました。しかし、雷サマは当初脚本が気に入らなかったそうです。

『ひとり狼』(’68)について、池広監督は「綺麗に撮りすぎた。男と女の情、孤独感が出ていない」と振り返られました。しかし私も皆さんも雷サマの股旅映画でも屈指の名作と思いますよね? 池広監督の探求心に頭が下がる思いです。

雷サマとの想い出を振り返り、「雷ちゃんから病気のことを電話で聞かされた。土曜の晩に東京から電話があり、『今日は京都に帰れなくなった。好ましからざる細胞が見つかった』と言った。翌日曜に見舞いに行った以降、会えなくなった」とのことでした。雷サマの生前、娘が泣くまで抱っこする姿を見て「やめなはれ」と言ったら、「この泣く顔が可愛いのや」と返されたことから、「雷ちゃんで“父と息子の葛藤”を描きたかった」とおっしゃられました。

今月ご紹介した作品のうち『炎上』『沓掛時次郎』『眠狂四郎女妖剣』『ひとり狼』は、「市川雷蔵祭」で上映されます。「市川雷蔵祭」は、全国順次上映中! 詳細は公式HPまで。名コンビ“池広×雷蔵”作品を是非スクリーンでご堪能ください!

薔薇大名

製作年:1960年

「あっしは大名! 拙者は奇術師! すり変って剣陣突破! からみもつれて痛快無頼!」『眠狂四郎女妖剣』などケレン味あふれる演出で評価が高い、池広一夫の監督デビュー作!

沓掛時次郎

製作年:1961年

恋の長ドス浅間に光る、意地と度胸の渡り鳥!

ひとり狼

製作年:1968年

おれにドスを抜かせるな、無残な死人がまたふえる!木曽の夕日に冷たく笑う 一本どっこの凄い奴!

炎上

製作年:1958年

誰も知らない! 誰も解ってくれない! 何故おれが国宝に火をつけたかを……

天下あやつり組

製作年:1961年

飲ませ、握らせ、さわらせて、天下を狙う素浪人!

眠狂四郎 女妖剣

製作年:1964年

妖しく激しく迫る五つの肌! 抱かんとすれば、襲い来る必殺の拳法! 迫る忍者!