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今月のピックアップ・バックナンバー

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第61回「『市川崑生誕100年記念』第1回 4Kデジタル修復について」

市川崑監督の略歴を紹介しようと思いましたが、本題に入る前にページを埋め尽くしてしまうので、映画祭公式HPの「市川崑プロフィール」をご覧ください。

当社の市川監督作品の原版は全てフィルムです。フィルム原版の問題点については、第46回「映画保存にまつわるエトセトラ」をご覧ください。フィルムは解像度のみならず、豊かな色彩の表現、生活感を生む音声、歴史が証明する長期保管の優位性、など映画に適していたメディアでした。しかし、近年の製作・劇場のデジタル化でフィルムを取り巻く情況は厳しいものとなりました。また、フィルムは褪色や加水分解などの経年劣化から逃れられません。そこで、今回は『炎上』、『おとうと』、『雪之丞変化』の3作品を「スキャン」、「修復」、「完成」まで全ての修復工程を4Kデジタルデータで作業を行いました。

修復に当たっては、総監修に崑プロの長田千鶴子氏、若林和子氏、市川建美氏、映像修復監修に撮影監督・宮島正弘氏、音声修復監修に録音技師・林基継氏をお迎えしました。メインの作業ラボを株式会社IMAGICAとし、音のダビング作業は日活スタジオセンター、『炎上』の音修復はアメリカのAudio Mechanicsにお願いしました。東京国立近代美術館フィルムセンターにもご協力いただきました。
はじめに修復監修者・スタッフ全員で、フィルムセンターに収蔵されている各作品のサンプルプリントの試写を行い、「市川崑監督や、宮川一夫撮影監督をはじめとする大映技術陣が作り上げた初映時のプリントの再現を目指そう」と修復の方針を決めました。

『炎上』(’58)ではフィルムで表現されたモノクロの世界を、デジタル上でどのように再現するかが課題でしたが、宮川一夫撮影監督に長らく師事された宮島氏の手により、“宮川調”が再現されました。また、一コマずつ確認できるカラーグレーディング(色補正)作業で、撮影時の苦労が偲ばれる発見もありました。

『おとうと』(’60)は、デジタルでの“銀残し”の再現に苦労しましたが、宮島氏と市川崑監督の下で編集を長らく手がけられた崑プロ・長田千鶴子氏の監修で、デジタル技術を使うことで次世代に“銀残し”の『おとうと』を残すことが出来ました。

『雪之丞変化』(’63)は、歴史ある京都撮影所の格調高い大映時代劇に市川監督のモダンなタッチが融合した作品であり、撮影・照明が一般的な時代劇とは違う作品です。ここでもカラーグレーディング作業で市川監督と小林節雄撮影監督が狙った意外なショットを発見しました。

音の修復に関しては、林氏の培われた録音技術・知識により、カット毎に微妙に強弱がある音の変化は、撮影時のマイクの置き場所と密接な関係がある事、音でどのように臨場感・空気感を表現するか、などが分かりました(詳細は後述のBlu-ray BOXのブックレットにて)。

今回ご紹介した3作品を収録した「市川崑 4K Master Blu-ray BOX」には、約100分の特典DVDも入っており、その中の一つ「4Kデジタル修復について」で上記の意外な発見の真相が分かります。また「市川崑・映像の秘密[リエディット完全版]」では市川崑の未公開インタビューを発掘、既存の特典に約30分が.追加・再編集されました。林氏による「音声修復における寄稿文」も入ったブックレット、3作品のサントラを収録した特製CDも封入、とファン必携な商品となっております。もちろん各作品の単品Blu-rayもございます。

また、生誕100年記念映画祭「市川崑映画祭−光と影の仕草」も、2016年1月16日(土)からの上映が決定いたしました。こちらは次回で紹介いたします。こちらもお楽しみに!

突然ですが、61回目にして始めてのクイズです。「今回の3作品で皆勤出演された俳優がお一人いらっしゃいます。誰でしょう?」 正解は次回にて!

炎上

製作年:1958年

誰も知らない! 誰も解ってくれない! 何故おれが国宝に火をつけたかを……

おとうと

製作年:1960年

これは人間の魂のふるさとの物語です。
“家”というものは父性愛、母性愛、夫婦愛、姉弟愛で成り立っているといわれていますが、どんなに愛し合っていても人間は孤独です。孤独を前提として、いたわり合って暮らしているから、その愛情が美しいのだと思います。――市川崑(公開当時のプレスシートより)

雪之丞変化

製作年:1963年

長崎から江戸へ!恋と復讐が渦巻く豪華絢爛!日本一のオールスター時代劇!

市川崑映画祭−光と影の仕草

製作年:

その出会いは永遠に色褪せない

「巨匠」と呼ばれながらも常に時代の先端を軽やかに駆け抜けた日本を代表する映画監督・市川崑‐『雪之丞変化』『おとうと』『炎上』デジタル復元版ほか一挙上映!